初めてウイスキーを一本買ったとき、家にあるのはたいてい水用のコップと焼酎グラス、マグカップくらいだ。そこでいきなりグレンケアンの正規品を注文する人もいるが、多くはまず「ダイソーに何かないかな」と探す。その順番は間違っていない。
グラスの値段の差は、ほとんどが素材と仕上げ、そして名前の分だ。香りに関わるのはそのうち形ひとつだけで、形は安くても手に入る。この記事は、その形を1万ウォン(約1,000円)以内で探す話だ。
最初に断っておくと、以下のグラスを実際に使って書いたわけではない。販売元が公開している素材・容量・寸法と、出典を明記したコミュニティの反応をもとに整理した。価格と在庫は2026年10月2日時点の韓国の各公式ストアのもの。生活雑貨のグラスは入れ替わりが早いので、買いに行く前にもう一度確かめてほしい。

安いグラスで見るところ
高いグラスと安いグラスを並べると、違いはだいたい三か所に出る。
まず飲み口。ボウルがふくらんでから上にすぼまるグラスは、香りが上にたまる。上下の径が同じ円筒形のコップでは香りが散ってしまう。これは値段と関係ない。1,000ウォンのグラスでも口がすぼまっていればノージングに使える。
次に縁。安いグラスの多くは、切り口を火で溶かして丸く仕上げている。欠けにくいかわりに縁がぽってり厚くなる。高いグラスは切ってから研磨して薄くする。縁の厚みが唇に触れる感覚を変えるのは事実で、安いグラスでまず諦めることになるのもここだ。
最後に素材。生活雑貨のグラスはほぼソーダ石灰ガラスで、少し上がると強化ガラス、その上が「クリスタリン」や無鉛クリスタルになる。ソーダ石灰は軽く、澄んだ音はあまり鳴らない。強化ガラスは丈夫なかわりに、割れるときは粉々になる。クリスタル系は透明度が高く、薄く引ける。鉛クリスタルと無鉛クリスタルの違いは別にまとめてある。
この三つさえ見れば、売り場で迷うことはあまりない。
ダイソー — 見かけたら買う店
ダイソーのグラスは季節ごとに入っては消える。今回ダイソー韓国のオンラインモールを確認したところ、ウイスキーに使えそうなものはほとんど品切れだった。
無鉛クリスタル ブランデーグラス 110ml — 2,000ウォン。底が広く上がすぼまるチューリップ形。名前はブランデー用だが、構造だけ見ればダイソーでいちばんノージンググラスに近い。110mlはウイスキー30mlを注ぐのにちょうどいい大きさだ。確認時点では品切れ。
店舗には同じ名前の210mlもある。棚のラベルには「クリスタル ブランデーグラス、Lead Free Crystal、約210ml、2,000ウォン」とあり、脚に中国製の表示がある。卵形のボウルが上にすぼまる脚付きグラスで、スニフターよりワイン業界のISOテイスティンググラスに近い。110mlよりボウルが大きいぶん香りの集まり方はやや弱いが、回しやすい。オンラインモールでは確認できなかったので、店舗で探すことになる。
角型ウイスキーグラス 185ml 2個入り — 1,000ウォン。角ばったロックグラス。2個で1,000ウォンなので来客用に気軽に使える。これも品切れだった。
チェコ産ボヘミアクリスタル ワイングラス 450ml 2個入り — 5,000ウォン。2026年3月に韓国の生活系メディアがダイソーのクリスタルグラス3種を紹介した際に取り上げた品だ。ウイスキー用ではないが、小ぶりのワイングラスはバーで昔からノージンググラスの代わりに使われてきた。ただ450mlはウイスキーには大きく、香りが広がりやすい。
韓国のウイスキー好きの間には「チャプケアン」(偽グレンケアン、くらいの意味)という呼び名まであり、ダイソーのグレンケアン形グラスはたびたび話題になってきた。2022年12月にDCインサイドのウイスキーギャラリーに投稿されたレビューは、1個2,000ウォンの中国製2種(通常形とステム付き)を比べ、通常形は底の研磨にむらがあり、ステム付きは仕上げがいいかわりにかなり小さいと書いている。2024年3月のクリアン(Clien)ウイスキー掲示板では「正規品だってどうせよく割れる」と、まずダイソーのグラスから試すよう勧めるコメントがいくつも付いた。来客用はダイソー、自分用は正規品と使い分ければいいという意見もあった。
グレンケアンの形をまねたグラスを買うこと自体は問題ない。ただ、グレンケアンのロゴまで入れて正規品のように売っているものは話が別だ。それは本物と偽物の見分け方で扱った。
イケア — 今は「ウイスキーグラス」という名前のものがない
以前のイケアにはFRASERA(フラーセラ)というウイスキーグラスがあった。30cl、重みのあるクラシックな形だ。いまイケア韓国でこの商品ページを開くと「ビールグラス/ウイスキーグラス/焼酎グラス」カテゴリに飛ばされ、そこにはビールグラス3種とシュナップスグラス1種しか残っていない。名前にウイスキーと付くグラスはない。
なのでイケアでは普通のタンブラーから選ぶことになる。使えそうなのは二つ。
POKAL(ポカール)グラス 27cl — 1,900ウォン。高さ10cm、径9cm、強化ガラス、食洗機可。底の厚い背の低いタンブラーで、ほぼオン・ザ・ロックグラスの比率だ。大きな氷ひとつにウイスキーを注ぐのにちょうどいい。イケアのサイトには22年割れずに使っているというレビューもある。ただし重ねて収納はできないと書かれている。
STORSINT(ストールシント)グラス 37cl 6個セット — 19,900ウォン。1個あたり約3,300ウォン。イケアが「クリスタリン」と呼ぶ素材で、普通のガラスより透明で、乾杯したときにきれいな音がすると説明している。フランス製、デザイナーはアーロン・プロビン(Aaron Probyn)。37clはウイスキー1杯には大きく、ハイボールや大きな氷のロック向きだ。レビューでは、きれいだが洗うときに気を使うという声がよく出てくる。POKALとは正反対の性格だ。

どちらも香りを集める形ではない。ノージング用を期待して買わないこと。
無印良品 — 1,900ウォンのコップは誰が作ったのか
無印良品の「ガラスコップ」は装飾がまったくない基本のタンブラーだ。韓国では約200mlが1,900ウォン、約350mlが2,900ウォン。素材はソーダガラス。
面白いのは商品情報の表示欄だ。無印良品韓国の公式ストアでこのコップの製造者を見ると「TOYO SASAKI GLASS CO.,LTD CHIBA PLANT」、つまり東洋佐々木ガラスの千葉工場と書かれている。日本のクリスタルウイスキーグラスの記事で取り上げたあの会社だ。もちろん東洋佐々木のクリスタルのラインとは素材が違う。それでも、日本の大手ガラスメーカーの工場で作られた基本のコップが2,000ウォン以下というのは知っておいていい。
200mlはウイスキーをストレートで、あるいは小さな氷をいくつか入れて飲むのに向く。350mlはハイボール用だ。どちらも円筒に近い形なので、香りは集まらない。

パシャバフチェ — バーで出てくるあのグラス
名前は知らなくても、グラスは見たことがある可能性が高い。パシャバフチェ(Paşabahçe)は1935年にトルコのイスタンブールで始まったガラスメーカーだ。韓国では業務用厨房用品のショップでよく見かけ、1個単位で買える。
ウイスキー向けにはこんなものがある。サイド・アンダーロック ウイスキーグラス225mlが2,260ウォン、グランド・アンダーロックス310mlが3,400ウォン、シティ ウイスキーグラス345mlが2,600ウォン。業務用なので形にくせがなく、ひとつ割れても同じグラスを買い直しやすいのが意外に大きな利点だ。単価は安いが送料が3,000ウォン前後かかるので、まとめて買ったほうがいい。確認時点でサイド・アンダーロックは品切れだった。

ニトリは?
ニトリは日本ではロックグラスを100〜300円台で売っている。問題は韓国の店舗だ。2023年11月に1号店を出したが、2025年にその1号店を含む複数店舗が閉店し、2026年3月時点で国内の店舗は5か所になった(ディールサイト報道)。近くに店がなければ、わざわざ行く理由はない。
1万ウォンでそろえるなら
役割で分けると考えやすい。ホームバー入門のグラス3種で書いたノージング・ストレート・ロックの区分をそのまま使い、値段だけ下げる。
香りをとるグラスをひとつ。ダイソーのチューリップ形ブランデーグラス(2,000ウォン)か、グレンケアン形のグラスがあればそれで。なければ、ここだけは少しお金をかけて正規品のグレンケアンを買うのも手だ。三つのうち形がいちばん大事なのはこのグラスだ。
ストレートで飲むグラスをひとつ。無印良品200ml(1,900ウォン)。
氷を入れるグラスをひとつ。イケアPOKAL 27cl(1,900ウォン)か、パシャバフチェのロックグラス。
全部合わせても6,000ウォン前後だ。残ったお金で同じグラスをもうひとつずつ買っておけば、友人が来ても数がそろう。
安いグラスに期待してはいけないものもある。薄い縁、手に持ったときの重み、触れ合わせたときに長く響く音。それが物足りなくなったら、そのとき価格帯別のウイスキーグラスを見ればいい。それまでは今のグラスで十分だ。最初の何本かは、グラスよりウイスキーそのものを知っていく時間なのだから。
