アムルットAmrut

インド初のシングルモルト。熱帯の暑さが速く育て、天使は多くを持ち去る。
インドのウイスキーと聞くと、いまだに色眼鏡で見る人が多い。安物だろう、という思い込みだ。アムルットはその偏見を真正面から壊した最初の蒸溜所だ。2000年代初め、評論家ジム・マレーが著書『ウイスキー・バイブル』でアムルット・フュージョンに高得点をつけ、世界がインドのシングルモルトを見直した。
秘密は気候だ。インド・バンガロールの暑さの中で、ウイスキーはスコットランドより何倍も速く熟成する。樽と酒の呼吸が激しく「天使の分け前」で飛ぶ量も多いが、その分、短い熟成でも凝縮した風味が出る。だからアムルットには12年や18年といった数字があまり見られない。インドの4年はスコットランドの10年以上に匹敵すると言われるのも、理由のないことではない。
だからアムルットを選ぶとき、熟成年数にこだわるのは意味が薄い。入門ならフュージョン——インド産大麦とスコットランド産ピーテッド大麦をブレンドした一本——が一番無難だ。ピートがほのかに敷かれつつトロピカルな甘みが支え、「インドのウイスキー」への先入観を一杯で片づけてくれる。
個人的には、アムルットがウイスキーの地図を広げた功績は大きいと思う。スコットランド・アイルランド・日本の外にも本格的なシングルモルトがあると証明し、その後、台湾のカバランが同じ道を継いだ。
インドの『ウイスキー』の多くは糖蜜ベースの安価なIMFLだが、アムルットは本物の大麦シングルモルトとしてインドを世界のウイスキー地図に載せた。フュージョンが2010年のジム・マレー『ウイスキーバイブル』で97点、世界で3番目に優れたウイスキーに選ばれ、一気に注目された。コアラインは手頃だが、グリーディ・エンジェルスのような長期熟成の限定品は、暑い気候で長く熟成させること自体が稀なため高値がつく。
評価 — Jim Murray's Whisky Bible (2010) · 価格は小売·免税のおおよそ · 主観的な試飲評価ではない
アムルットはインド南部ベンガルール、標高約900mの高地で造られる。暑く乾いた気候で酒が樽と速く反応し、スコットランドなら10年以上かかる熟成を4〜5年で引き出す。代わりに年間の蒸発量は10%を超え、少ない収量と引き換えに濃縮した香りを得る。北インドで育てた大麦で仕込み、フュージョンにはスコットランド産ピーテッドモルトを加えて、インド大麦の甘みと淡いピート香を一杯に重ねる。
ジャグダレ家が1948年にベンガルールに設けた醸造·蒸留企業がルーツだ。長らくインド国内向けの酒を造っていたが、2004年に英国グラスゴーで『アムルット』の名でインド初のシングルモルトを世に出した。『アムルット』はヒンドゥー神話で神々が飲む不死の甘露(アムリタ)を意味する。インドで生まれながら、むしろ欧州の愛好家が先に見出した珍しい道を歩んだ。
欧米市場でアムルットは、インド産という意外性と濃い麦芽·スパイスで愛好家の心をつかんだ。華やかなシェリーより重くスパイシーな方を好む人に合い、フュージョンはピート入門としてもよく薦められる。世界最大のウイスキー消費国インドが、シングルモルトではむしろ後発だったという点が、この一本の物語の半分を占める。
濃い麦芽とスパイス、フュージョンの淡い煙を活かすには、香りを上に集めるグレンケアンやコピータが合う。コアは46度前後でニートでも十分だが、カスクストレングス(60度台)は数滴の水が刺すアルコールを落ち着かせ、甘みを開く。香りが強い酒なので、大きな氷で抑えるより常温でゆっくり置いて飲む。
出典 · 評価 — Jim Murray's Whisky Bible (2010) · 製法·ラインナップ — amrutdistilleries.com · 歴史 — Wikipedia 'Amrut Distilleries' · 製品画像 — Amrut
