ザ・マッカランThe Macallan

一本4億円。シェリー樽にすべてを賭けたシングルモルト。
マッカランを検索して最初に出てくるのは、テイスティングノートではなくオークションの落札額だ。このブランドを理解するには、味と同じくらい「価格がどう作られるか」を見る必要がある。鍵はシェリー樽だ。スペイン・ヘレスでシェリーを詰めて空けたオーク樽は数が限られ、マッカランはその樽を自ら発注して取り寄せる。樽一つの値段が中身のウイスキーを上回ることもあり、シェリー一辺倒のアイデンティティはそのままコスト構造でもある。
2004年、シェリー樽が不足するとマッカランはバーボン樽を交えた「ファインオーク」を出し、ファンの反発を招いた。いまのダブルカスク・トリプルカスクは、その悩みの延長線上にある。シェリーだけにこだわれば量が出ず、価格は上がる。店頭で見る12年一本の値段には、この需給の綱引きがそのまま乗っている。
投資対象としてのマッカランと、飲むためのマッカランは、実は別の話だ。1926年ヴィンテージが数億円で落札されたというニュースは、ごく一部のコレクターの世界の話。多くの人にとってマッカランは、シェリーの甘みが初めての一杯にもなじみやすい入門向けのプレミアムだ。12年かダブルカスクを一杯飲めば、なぜ「シェリー爆弾」と呼ばれるかは十分わかる。
高い金を出す前に知っておくと良いのは、熟成年数と満足度が必ずしも比例しないこと。18年と25年の価格差は、味の差というより希少性の差に近い。入門なら、まず12年からシェリーが自分の好みかを確かめるのが理にかなっている。
1926ヴィンテージはヴァレリオ・アダミやピーター・ブレイクといった画家がラベルを手がけたシリーズで、同年の別ラベルも100万ポンド前後で取引された。マッカランはレア・ウイスキー101などのオークション指数で常に最上位に並ぶ。
価格は免税・小売の目安 · オークション — Sotheby's / CNN (2023.11) · 個人の試飲評価ではない
ほとんどのウイスキーがバーボン樽(アメリカンオーク)で熟成するのに対し、マッカランはシェリー樽に正体を賭ける。看板のシェリーオークはヨーロピアンオーク(干した果実・スパイス)が主導し、ダブルカスクはアメリカンオーク(バニラ・甘み)を加えて均衡を取る。その結果が「シェリーボム」と呼ばれる濃く重い甘みの基準点だ。
1824年、アレクサンダー・リードがスペイサイド・クレイゲラキのイースター・エルキス農場に設立。スコットランドが密造を合法化し免許を出し始めた初期の蒸留所の一つだ。2018年には1億4千万ポンドを投じた新蒸留所を開き、品質に金を惜しまない資本力を示した。
マッカランは特にアジア — 中国・香港・台湾 — で成功や贈り物、地位の象徴として消費され、最高額を支えた需要の多くもアジアのコレクターだ。日本でも入門者が名を知るプレミアムの基準点で、濃いシェリーの甘みが最初の一本になじみやすい。欧米ではこのシェリーボムを愛する側と、重すぎるとアイラのピートへ向かう側に割れる。
香りが重く油っぽく、シェリーの甘い香りがぎっしり。こうした酒は香りを集めるチューリップ型 — コピータやグレンケアン — が定石で、厚いタンブラーに大きな氷では香りが閉じてもったいない。多くは40〜43%なので水はほぼ不要だが、レアカスクのような高アルコールなら水一滴で開く。台座を持って落ち着かせ、開かなければボウルを手で包んで温める。
出典 · オークション — Sotheby's / CNN (2023.11) · 製法・ラインアップ — themacallan.com · 製品画像 — The Macallan
