パピー・ヴァン・ウィンクルPappy Van Winkle

定価の十倍でも手に入らないバーボン。ウイスキー界のユニコーン。
パピー・ヴァン・ウィンクルはバーボン界の「ユニコーン」だ。小麦(ウィート)を使ったやわらかい高熟成バーボンで、造っているのは他でもないバッファロートレースだ。定価はそれほど高くないが、棚で定価で買うのはほぼ不可能に近い。
問題は熱狂だ。需要が供給を何百倍も上回り、二次市場では一本に数十万円の値が付く。ここで指摘したい誤解がひとつ。「パピーだからその値打ちがある」という考えだ。パピーは確かに良いバーボンだが、その価格の大部分は味ではなく、希少性と過熱した投機だ。同じ金額なら、もっとうまい酒はいくらでも買える。
現実的な助言はこうだ。定価で手に入らなければ忘れていい。同じウィートバーボン系のウェラーやオールド・リップ・ヴァン・ウィンクルの方がずっと入手しやすく、パピーの片鱗を感じさせてくれる。転売の上乗せ金を払って飲む酒ではない。
パピーの本当の価格は定価表ではなく二次市場にある。毎年秋に少量だけ出て抽選・割当で配られ、数百ドルの一本が数千ドルで転売される。偽造や詐欺が多く、空き瓶さえ取引されるほどだ。マッカランがオークション室の王なら、パピーはバーの奥棚と抽選の伝説だ。
定価は希望小売価格 · 二次相場は変動が非常に大きい(米国セカンダリー) · 個人の試飲評価ではない
パピー・ヴァン・ウィンクルは自ら蒸留するブランドではなく、ケンタッキーのバッファロー・トレース蒸留所が造ったウィーテッド(小麦)バーボンの原酒のうち、長く熟成したものを選び出すセレクションだ。ライ麦の代わりに小麦を副穀物に使い、辛いスパイスの代わりにキャラメル・バニラ・トフィーの柔らかな甘みが長く続く。15年を超えるとオーク・革・葉巻の葉の深みが加わる。
ジュリアン「パピー」・ヴァン・ウィンクル・シニアが1893年にウイスキー事業に入り、スティッツェル・ウェラー蒸留所を率いて小麦バーボンの伝統を築いた。一族は蒸留所を失った後もブランドを守り、2002年にバッファロー・トレース(サゼラック)と組んで今のパピー・ヴァン・ウィンクルの製品群が生まれた。4代にわたり一族の名を冠したウイスキーだ。
アメリカでパピーは「手に入るかどうか」がそのまま話題になるウイスキーだ。抽選に当たるか、行きつけのバーの最後の一杯に出会ってようやく定価に届き、あとは二次市場が引き取る。日本では正規流通がまれでさらに希少、その分愛好家の間で名の重みが大きい。強い個性より、小麦バーボン特有の丸い甘みを好む人にとっての頂点とされる。
度数は90〜95プルーフ(45〜47度)でバーボンにしては柔らかく、香りを集めるグレンケアンやコピータにストレートが真価を生かす。氷を入れると冷えるがキャラメル・バニラの甘い香りが閉じるので、飲むなら大きな氷ひとつでゆっくり。貴重なだけに大きなグラスに溢れるほど注ぐより、指一、二本ぶんの深さで味わう。
出典 · 製法・ラインアップ — oldripvanwinkle.com / バッファロー・トレース · 二次相場 — 米国セカンダリー(変動大) · 製品画像 — Old Rip Van Winkle
