イギリスでは「パイント」はビールを注文する言葉でもある。「A pint, please.」グラスを頼んでいるのか、量を頼んでいるのか区別がつかない。それほどパイントグラスとイギリスのパブ文化は切り離せないほど結びついている。
パイントとはどれくらいか
イギリスのパイント(インペリアルパイント)は568mlだ。アメリカのパイント(USパイント)は473mlだ。同じ「パイント」でも約100mlの差がある。この違いを知らずにイギリスのパブでパイントを注文したアメリカ人がグラスの大きさに驚くことは珍しくない。
イギリスとアメリカのパイントが異なるのは、度量衡体系の歴史的分岐によるものだ。アメリカは植民地時代に使用していた単位を基に独自に発展させ、イギリスはその後独自に度量衡を再整備した。同じ名前の単位が異なる量を指すようになったのはこの過程の結果だ。
イギリスでパイントの法的地位は強力だ。1985年の度量衡法(Weights and Measures Act)はビールをパイントまたはハーフパイント単位で販売するよう規定している。パブでパイントのビールを注文したとき568mlが出なければ法律違反だ。グラスには公認された容量を示す政府認定マークが必要だ。

ノーニックパイントグラスの誕生
今日のイギリスのパブで最もよく見られるパイントグラスはノーニック(Nonic)パイントグラスだ。特徴は上から約3分の2の位置にある膨らんだ突起だ。下部は真っ直ぐ上がってきて、この地点で外側にふくらみ、その後少し内側に絞られる形だ。
この膨らんだ部分はなぜあるのか。理由は二つある。
グリップ感。 膨らんだ部分を親指と人差し指で包んで持つと、滑らずに安定してグラスを握れる。ビールが入った重いパイントグラスを片手で持ち上げるとき、この突起が確実な固定点を提供する。
積み重ね可能性。 同じ形のグラスを複数重ねて保管するとき、上のグラスの底が下のグラスの突起に引っかかって空間が生まれる。グラスが互いにぴったりはまって抜けなくなる問題(スタッキング)が防止される。数百個のグラスを管理するパブにとって、これは重要な実用的問題だった。
ノーニックデザインは1960年代にイギリスのガラス会社Ravenhead(レイヴンヘッド)が開発したとされている。「No Nick(傷なし)」からノーニックという名前が来たという説がある。以前の真っ直ぐなパイントグラス(ストレートパイント)は口同士がぶつかって欠けやすかったが、ノーニックデザインはこの問題を解決した。
パイントグラスの種類
イギリスのパブで見られるパイントグラスはノーニック以外にも複数ある。
ストレートパイント。 円筒形で直線的だ。ノーニック以前の伝統的な形だ。今でも一部のパブで使われている。
ディンプルパイント(ジャグパイント)。 取っ手があり、表面にダイヤモンド型の凹凸がある。伝統的なイギリスのエール(Ale)文化と結びついたグラスだ。現在は少なくなったが、クラシックな雰囲気のパブで見られる。
チューリップパイント。 下が細く上が広がる形だ。アイリッシュスタウト、特にギネス(Guinness)のために設計されたグラスが代表的だ。ギネスの公式グラスはチューリップ形で、グラス表面の曲線がギネスの窒素泡(クリーミーヘッド)の形成に影響を与える。

パイントとイギリス社会
イギリスでパイントはお酒ではなく社会的な単位だ。「Let's go for a pint」は友人に会いに行こうという意味だ。会社の飲み会、スポーツ観戦、仕事終わりの集まりがすべて「パイント一杯」を中心に構成される。
イギリスのパブは単なる酒場ではない。「Public House(公共の家)」の略で、地域コミュニティの公共空間だった。17〜18世紀のイギリスでパブは情報が交換され、政治が議論され、契約が行われる場所だった。今でもイギリスの小さな町や農村地域ではパブはコミュニティ空間の役割を果たしている。
パイントグラスはこの文化の物理的な象徴だ。一人で飲むウイスキーグラスやワイングラスとは異なり、パイントはテーブルに複数並んでいるときにこそ意味を持つ。
パイントの泡論争
イギリスでパイントを注文するとビールの上に泡(ヘッド)がある。泡の厚さは長年論争の種だった。
度量衡法の解釈によれば、パイントグラスには568mlの液体が入っていなければならない。しかし一部のパブは泡込みで568mlを提供している。実際の液体はそれより少ない。消費者団体はこの問題を長く提起してきた。
一部のパブは「サービングライン(Serve Line)」の表示があるグラスを使う。この線までビール本体が満たされなければならないという表示で、そのグラスには泡が上がるスペースが別に設計されている。イギリスの消費者はグラスが少なく注がれたと感じた場合、「Top up(追加で満たして)」を要求する権利がある。
